2017年5月30日
2017年4月現在、日本の世界遺産登録数は文化遺産が16件、自然遺産が4件の合計20件であるのに対し、ベトナムにも文化遺産が5件、自然遺産が2件、複合遺産が1件の合計8件登録されています。
ベトナム駐在中でないと訪れることは難しいのではないかと思い、またベトナムの歴史に思いをはせるべく、実際にベトナムの世界遺産を訪れてみました(但し、上記⑤と⑧は未訪問につき、除く)。
※括弧内の年は世界遺産に登録された年です。
ベトナム最後の王朝、阮朝時代(1802~1945年)の王宮(旧市街)や歴代皇帝の帝陵などからなるベトナム最初の世界遺産。王宮については堀で囲まれており、王宮門をくぐると太和殿がそびえるが、王宮建造物の多くはベトナム戦争中に破壊され、またその爪痕も随所にみられます。帝陵(皇帝のお墓)については2代:Minh Mang帝、4代:Tu Duc帝、12代:Khai Dinh帝の3つの帝陵が有名ですが、時代背景の違いから、2代・4代が風水を重んじる中国の建築様式に対し、12代は西洋、東洋のさまざまな建築様式を用いるなど、その違いが非常に興味深いです。
ベトナム中部のダナンから南東約30km、トゥボン川の三角州に形成され、15~19世紀にかけてアジアとヨーロッパを結ぶ中継貿易都市として栄えた港町。16~17世紀ころには日本人町もつくられており、全盛期には1,000人以上の日本人が住んでいたとか。なお、夜のホイアンは色とりどりのランタンが灯され、ノスタルジックな古い町並みは一転、エキゾチックで幻想的な雰囲気に感じられます。
ホイアンから南西に約40kmのところにある、四方を山々で囲まれた遺跡群。かつてチャム族が築いた「チャンバ王国」時代の聖地で、当時は限られた人物しか近づくことのできない神聖な場所だったといわれています。自然崩壊に加え、ベトナム戦争時のアメリカ軍の空爆もあってその多くが崩壊したため、現存している遺跡はわずかであるも、ヒンズー教の影響を受けた宗教建築物は大多数が仏教徒のベトナムの建築物とは大きく異なり、その神秘的な雰囲気を十分に感じとれます。
ハノイの旧市街の西側にある、かつて11~19世紀に栄えていたベトナム王朝の城跡。なお、タンロンとはハノイの旧称(漢字で「昇龍」)。もともとこの一帯は軍の管理下にあったことから入域制限されていたが、2005年頃から発掘調査を終えた遺跡の一部が一般公開に。遺跡は多々あるも、その中でも第一城壁に配置されている正門である端門は、威風堂々としており、威厳すら感じさせます。
ハロン湾はベトナムきっての景勝地で、海面からタケノコのように突き出した大小2,000程度の奇岩が海面に出ていますが、その光景から「海の桂林」とも言われ、現在では年間200万人以上の観光客が国内外から訪れと言われています。ハロンという地名は「ハ:降りる、ロン:龍」を意味しますが、その昔、中国からの侵略に悩まされていたこの地に龍の親子が降り立ち、敵を打ち破って、さらには吹き出した宝玉が奇岩となって海からの外敵の侵入を防いだことが名前の由来といわれています。ハロン湾に浮かぶ奇岩は長い年月の浸食作用によってそれぞれ個性的な形となり、なかには象岩や犬岩、ゴリラ岩、闘鶏岩などユニークな名前の奇岩も。また奇岩の1つである「香炉島」は20万ドン札にも印刷されており、ベトナム人にとってはなじみ深いものです。
奇岩以外の見どころの1つとして、ハロン湾に浮かぶダウゴー島にティエンクン洞やダウゴー洞といわれる鍾乳洞があります。実際、後述⑦のフォンニャ洞窟に比べると規模は小さいものの、ブルーやグリーンにライトアップされた多数の鍾乳石や石筍は非常に幻想的に映ります。
豊かな原生林に覆われ、多様多種の動植物が生息する国立公園。アジアで最古のカルスト地形で知られ、その大きさは約86,000ヘクタールと、新潟の佐渡島とほぼ同じとか。なお、国立公園内に大小約300の鍾乳洞もあるが、一般公開されているのは「フォンニャ洞窟」と「ティエンソン洞窟」の2つのみです。
「フォンニャ洞窟」には徒歩ではなく、船着場からボートに乗って洞窟の入口へ。入口から先はエンジンを切り、オールを漕いで進んでいくのですが、進む先には多数の鍾乳石や石筍が現れ、ライトアップでよりいっそう神秘的な雰囲気に。形成されたのは約2億5,000万年前といわれていますが、鍾乳石や石筍は今もなお成長を続けていると聞き、その自然の営みには只々驚かされます。
「ティエンソン洞窟」は「フォンニャ洞窟」の入口でボートを降り、約1,200段ある階段を登った先に
ある洞窟であるが、「ティエンソン洞窟」とは直訳すると「仙人山の洞窟」という意味で、日頃運動不足の筆者にとってはまさに修行といえました(苦笑)。なお、洞窟にたどり着くと、それまでの疲れが吹き飛ぶほどの光景に圧倒されます。
なお余談ですが、筆者のいるHCMCを中心とした南部に世界遺産はひとつもありません
(地域毎で分けると、北部:4か所(④⑤⑥⑧)、中部:4か所(①②③⑦)、南部:0か所)。
南部にも歴史を感じる観光名所は多々ありますが、世界遺産となるとまた選定基準が違うようです。
自然遺産のふたつは只々自然の凄さを感じ、文化遺産についてはそれぞれが全く独立したように見えるも、実はベトナム史とのつながりが強く、実際に訪れて現地の方々に話を聞くことにより、初めて知ったことが多々ありました。現在未訪問である⑤と⑧含めベトナム史を知った上で訪問すれば、また違った再発見があるのではないかと思い、機会あればまた再訪でもと思う今日この頃です。