私が入社した平成12年ごろの日機装は「技術力はあるが成長性がない」地味な企業で、社内にも停滞感が色濃く漂っていたように思います。4年間メディカル部門の仕事に携わってメーカーとしての日機装の強みを実感したことが社長に就任してからの経営方針の転換にある程度の自信をもって臨めるバックグラウンドとなりました。
平成18年に、本格的な中期の経営計画を初めて社内で採用しました。中期計画では、足元の目標を積み上げていってだんだんと全体像をイメージしていくのではなく、目指すべき高いゴール、挑戦しがいのある未来の姿をあえて示して、それを達成するためには今、何をしなければならないかという答えを社員に求め続けました。中期計画のスタート時点では社員が本気にしなかった売上高1000億円や海外売上比率50%にほぼめどがつき、創業60周年を迎える今年(平成25年)は、第3次の中期計画に入ります。これまで先行投資的にやってきた海外の事業展開の成果も具体的に出していかなければならない時期にさしかかりました。社員にも少しずつ自信と自覚ができてきたように思います。
これから、会社としてどこまで成長できるか、私の経営判断にとって大切なのは、目の前の課題に真剣に対峙している者がいるか、何人いるのか、それは誰か、その人は能力や機会を存分に活用しているか、という点です。会議ではたくさんの資料やデータや細かい予測数値を並べた事業計画が用意されます。ないと困るし、資料を作成した社員には悪いのですが、まあ、参考程度でしょうか。市場があって、お客さまがいて、競争相手もいて、結局のところ勝てるかどうかは我々の実力次第、社員が本気で向きあってくれるかどうか次第なのですから。
週末は、仕事のストレス解消のためと称して、ゴルフに励んではまたストレスを溜め込むことが多いのですが、ゴルフは、雨の日も強い風の日も、その日なりに、その時、その場所で、精一杯の準備と、持てる知識、経験、道具そして懐事情と直感を総動員して挑戦しなければなりません。健康のためとはいえ、何よりも「マナーとは他人に不愉快な思いをさせないこと」というイギリス流の教えを若い頃に学びながら、未だに反省することの多いラウンドです。
先達に「ゴルフ場は、来たときよりも良い状態にして帰る」という言葉があります。バンカーを忘れずに均したり、芝をいたわったりという日常の所作に気を使うだけでなく、「ゴルフ場に来た時よりも」「ゴルフを始めた時よりも」ゴルフというスポーツに自分は何が貢献できるのかと思い、行動をとることで、ゴルフの持つ魅力の底辺そのものが作られ、堅牢になりながら広がっていくのだと思います。
仕事にもゴルフとの共通点は多そうです。いやいややっていても決して上達しないこと、必要なのは経験を積む機会に恵まれる(あるいは機会を作る努力をする)こと、達成のための努力を惜しまないことであり、また、管理者であれば企業の「今」だけでなく、企業の「これから」にも責任があることを自覚することも必要です。社員が仕事のマナーや社会のマナーを守ることはもちろん、社員一人ひとりのやりがい、働きがい、達成感が人生の夢・情熱となり、それが企業の成長の原動力となり、お客さま満足の源となる。そんな企業を目指していきたいと思っています。