私には「信条」とか「座右の銘」とか、およそ人様にご披露できるような立派な指針を持って人生を送ってきた実績はありません。日頃から「こう在りたいな」という願望も含めて、思いの一端を述べさせていただきます。
私の好きな言葉は「只管」です。
只管(しかん)は国語辞典的には「ただひたすら」の意味です。
いささか宗教的ではありますが曹洞宗を開いた道元禅師の教えである「只管打坐」(しかんたざ)「ただひたすら座禅する」の「只管」であります。
道元禅師は「座禅をすることによって何かを得ようと思うのでなく、その姿がすなわち仏」と言われたそうです。
我々はそんな高尚なことを求めるのでなく、社会生活の中でただひたすら何かに打ち込む。それが仕事であれ遊びであれスポーツであれ・・・刹那刹那を大切に「今を生きる」こんな生き方が出来れば最高であろうと。
これからの人生も、こう在りたいものと思っております。
昨年8月、三協化成社長に就任しました。それは37年間携わったアルミ建材の生産から「樹脂」という全く未経験の分野への転籍です。「樹脂の知見がほとんどない自分に、果たしてこの責務が務まるのだろうか」との不安が一瞬よぎりましたが、会社にはそれぞれのセクションに役割を担った人材が配置されているはずである、自分の仕事は、いかに彼らの能力やる気を引き出すか、それが第一の使命である、と当たり前のことではありますが、これが「自分の会社人生」最後のご奉仕と考えました。
世の中には天才偉人と呼ばれる人がまれに存在しますが、所詮一人の力には限界があります。大多数の人はいろいろな組織の中で何かの役割を担って生きています。それが会社組織の中では、大きな歯車の人から小さな歯車までそれぞれ持分は異なりますが、そのどこが欠けても正しく機能いたしません。
そんな一人一人の社員が、活き活きと明るく働いてくれるより良い企業風土作りをこれからも心がけて行きたいものと思います。
「只管」この心を大切にしながら、会社人生もこれからの余生も。